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【SO2って何だろう?】 あるワインのイベント会場での一コマです。 スーツ姿の流通関係者とおぼしき人達が、「このワイン、SO2の香りがキツイね。」と試飲を しながら話をしているのが聞こえてきました。 ヌヌ・・SO2の香りがキツイ?? そんな香り、私は知らないぞ。 それは一体、何だろう。 もしかして、抜栓した時に一時的に香るあのつ〜んとした匂いのことかな。 でも、そうだとしてもその匂いのするワインは最近ではもう滅多にお目に掛ることはないし、そ れも抜栓してグラスに注いだほんの一瞬香るだけで、すぐに消えてしまうもののはず。 それにここは大勢の人が入場している試飲会場。 SO2の香りがキツイと感じる体験をするなどまず考えられない。 ここではあまり難しい話はしたくないのですが、どうも見過ごす訳にはいかないようなので少し私の意見をまとめてみました。 最近は健康志向あるいは自然志向の世の中なので、ワインも例外ではなく無添加を謳い文句にした商品が目に付きます。 ワインの場合、無添加とは酸化防止剤と呼ばれるモノが入っていない商品を無添加と言うようです。 そしてこの酸化防止剤が他ならぬこのSO2なのです。 まずSO2とは、二酸化硫黄のことです。 硫黄を燃やして出来る気体状の成分です。 この気体のままでは利用できないので、それを液体状にします。そうしたものを亜硫酸と呼びます。 そして、さらに固体(粒状)にしたものを、メタ重酸化カリウムと呼びます。 このようにして実際に使用出来るようにしています。 (以下、SO2で通します。) ではまず最初にこのSO2ですが、確かにこれ自体には刺激臭があります。 しかしワインの液体の中に入ってからこの臭いを感じる事が出来るなどまず考えられません。 それは、普通店頭に並んでから飲むワインはワイナリーでの瓶詰め時(つまりSO2添加)から早くても半年から一年以上経過しています。 その間にSO2は他の物質と結合して、SO2そのものではなく他の物質に変わっています。 だから、SO2の香りを嗅ぎとる事が出来るなどと言うことはありません。 つまり、前出の話の「このワイン、SO2の香りがキツイね。」と言うことは有り得ないと思います。(規定量以下しか入っていませんからね。大量にたっぷり入っているのならもしかして有り得るかもですが。) おそらく、それらが何らかの変化をした後の香りのことを指しているのだとは思いますが、私には全く検討も付きません。 それとおぼしき香り或いは臭いを感じたことすら一度もありません。 (私が勉強不足で知らないだけかもしれませんが、でもやはり考えられません。) では何故、ワインの世界でこのSO2なるものが最近特に話題になるのか、その辺りを見ていきたいと思います。 よく「ワインの二日酔いはそれはもうキツイて頭が痛くて大変だ、普通の悪酔いじゃないんだから。」などと言われることがあります。 そんないやな経験をした人たちが、ワインのラベルをしげしげとよく見てみます。 そこでワインの裏ラベルを見てみると酸化防止剤使用とか亜硫酸含有とか書かれています。 一体これは何だ。 添加物が入っているのか。 これが悪酔いの原因ではないのか。 と相なります。 「ワインはSO2が入っているだろう。それで悪酔いするんだ。だからワインは飲まないんだ。」 等と言う人もいらっしゃるぐらいですからね。 でもこれって本当なのでしょうか。 私にはよく分りません。 しかし想像するに悪酔いをしたのはSO2の所為ではなく、たまたま体調が悪かったか、疲れていたか、飲み方のペースが早かったか、あるいは飲みすぎたか、等々、一般的に言われる悪い飲み方をされたのではないでしょうか。 或いは飲み付けないものを飲んだので体が素直に反応してくれなかったのか。 (これはちょっと失言です。ご容赦の程を。でもあるんですよ、こうゆう事って。) それとも、品質に問題のあるワインを飲まれたか。 それがいつの間にかSO2悪者説となり、それが世間の健康志向、自然志向に乗ってより拡大していった。 そして、香りを嗅いだだけで、SO2と言う添加物が入っているとんでもないワイン?を見分けることの出来る?人が居る・・。 こんな有り得ない話になってしまったようです。 (前出の流通業者の方々は、ワインの品質のチェックをしておられたのだと思いますが、しかしながら 添加物である?SO2が云々という見方は、本来の品質チェックとは別だと思います。) ちなみに私がワイン専門家から聞いた話では、これらの俗説(SO2悪酔い説)に対して、科学的なメスも入っているそうです。 このSO2、本来の役目はワインを守ってくれる頼もしいナイトなのです。 まだまだワインの世界は分からないことだらけです。 酒屋慶風では、SO2を使っているワインだから仕入れを止めるなんてことはありません。 SO2を使わずに造ったワインだから素晴らしい、SO2を使ってあるワインは添加物の入ったワイン、こんな図式はおかしいと言わざるを得ません。 そんな事に関係なく、素晴らしいワインは悪酔いなんてしません。 そこにSO2が使われているから添加物の入ったワインなどと言われるのは困ります。 それは造り手さんの判断なのですから。 美味しいワインを造るために努力されておられる造り手さんを信頼し、その方々が行うことが正しいと判断して、品質・味わい共に優れたワインを見極めて取り扱うことこそが我々酒屋の使命です。 醸造の話、二酸化硫黄(SO2)の話、悪酔いの科学的根拠、等々の詳しい話はワイン研究機関の方々にお任せするのが本旨です。 今回はちょっぴり背伸びをして書きましたが、皆さんには俗説に惑わされること無く美味しいワインを飲んでいただきたいと思います。 (私の希望としましては、ワインと健康へのアプローチをどなたか医学的に専門家の方が行なっていただければ と思います。そうすることが、俗説が一人歩きしないで済む一番の方法だと思います。) 2005.03 |