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【ワインの「好み」についての補足】 先のコラム「ワインの魅力」で「ワインを知るとは好みを知ること」として「好み」という言葉を使いました。 この「好み」に付いて少し補足したいと思います。 例えとして、そうですねえ、コーヒーで見ていきましょう。 ライトな感じの味から濃いタイプとあります。 コーヒー好きの方にとって、それを選ぶ時って、その時の気分だと思います。 それから、時間帯とかもあるかもしれません。 コクのあるタイプのコーヒーで美味しいなあと思っていた物が、条件の違う時にその同じコーヒーを飲んだ時、あれ、「何だかコクが障って気になるなあ〜」なんてことありませんか。 一人ゆっくりと時間が取れる時に飲めば、そのコクをじっくりと味わえます。 しかし、急いでいる時に飲むとさっきのような感じを持ったりします。 タイプの好みもあるでしょう。 でも、それよりももっと根本的な味わいの好みが合致することの方が大切な要素です。 ここなんですね。 「好み」という言葉の意味することとは。 コーヒー好きの方は、おそらくお気に入りの行きつけのコーヒー専門店があるかと思います。 しかし仮に、行きつけの店でも、メニューにある全てが好みに合うかどうかは難しいところではないでしょうか。 モカ・ブレンドなら、どこそこの店が美味しいと思うし、って感じで。 さて、それではここでやはり食材に例を取りましょう。 例えとして「すしネタ」で見てみましょう。 今は6月です。 今が旬と言いますと「アナゴ」ですね。 一年中、出てくるすしネタですが、やはりこの時期の穴子は脂もあって身が厚くぷるぷるしていて、ほど良い歯ごたえもあって美味しいです。 季節がいつであっても、穴子が大好物と言う方はおられる訳ですが、でもやはり旬の味わいを楽しみにしておられることでしょう。 好物であればあるほどそうだと思います。 しかし反対に、ちょっと苦手な「すしネタ」があったとします。 そうなると、いくら旬に出てきたとしても、つまもうとはしませんね。 これも「好み」という事だと思います。 もちろん、食べずぎらいだった「すしネタ」が、何かの切っ掛けで大好物になったなんて話もありますからね。 まあ、いい加減といえばいい加減なものかもしれません。 好みなんて。 それでは、それをワインに置き換えるとどうなるでしょう。 好みの品種が見つかるということでしょうか。 そして反対に苦手な味もあるかもしれません。 赤ワインですと、「軽いタイプなら美味しいと思うけれど、重いタイプはどうもなあ」とか。 「ピノ・ノワールは大好きだけれど、カベルネはちょっと苦手」とか。 そうなると、いくら教科書的にこれこれこうゆう魅力があると説明されても、あまり意味がありません。 そのように感じないのですから。 要するに、自分の味覚を信用することが大切だということです。 綺麗だなあと思う色。 心地よい果実の香り。 舌の上を滑らかに流れる素敵な美味しい味わい。 それを感じて楽しむのはご自身なのですから。 自分の感覚を頼りに、ご自身の思う美味しい「好みのワイン」に出会うこと。 これが言いたかったことです。 補足になりましたでしょうか。 それから、もう一つ補足します。 描いたものが好まれるのか。 好まれるものを描くのか。 これ、画家の悩みだそうです。 ワインも同じだと思います。 売れるとされるモノを造るのか。 造ったモノが評価されて売れるのか。 日本酒ですが、ここのところ、ようやく酒屋慶風オリジナル企画の「木花(このはな)特別純米酒」にご理解を頂けるようになりました。 現代の日本酒市場における売れ筋的な商品ではないのですが、ご理解を頂くと、正に「好みの酒」としてお飲み頂けます。 これでよかったと思っています。 好まれるモノを描いてもらって仕入れるのではなく、造り手の想いが反映されたお酒が評価されて売れていく。 つまり、ここにあるのは、飲み手である消費者さんと造り手が「想い」で繋がったことになります。 好みの一致をみた訳ですね。 2011.06 |