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<ワイン考> 酒販店の立場から見たワインへの疑問(その1) 【美味しいワインとまずいワイン】 実はすごく長い間、この事が疑問でした。 美味しいワインとまずいワインはどのように判断すればいいのか。 一応、流通業者としてはそういう鑑定眼を身に付けたいと思いました。 (それは今も同じです。) ところがワインの世界はどうも様子がおかしいのです。 その事に気が付いたのは、 え〜と、かれこれ20年以上前でしょうか。 有名なソムリエさんのセミナーに出席した時です。 講師の方がおっしゃいました。 ワインには「まずいワイン」は無いのです。 あるのはそれぞれの特徴とその味わいです。 それぞれのワインの良さを見つけて、それを伝えていくこと。 それがワイン販売の仕事です。 と。 え〜、ワインには「まずいワイン」が無いですって? そんな都合のいい事言って、もう。 それじゃあ、何が良いワインで何が美味しいワインなのかといった捉え方自体が出来ないじゃないか。 それは、幾らなんでもないだろう。 と思った事でした。 実は、こういうワインへの見方というものは今現在もそれほど大きく変わっていない様子もあります。 がしかし、やはりここに来て、それは通用しなくなってきているようにも感じます。 何が良質で美味しいワインなのか。 それをどのように見極めていくのか。 そこにこそワイン販売の醍醐味があると信じています。 もちろん、日本酒も同じです。 だって、これが出来ないのなら、当店の価値はどこにあるのか。 私自身の存在意義そのものが問われることなのに・・。 と思います。 しかし、これは本当に困難を極めました。 だって、「まずいワイン」はない。 という前提に立たれたら、もう先へは進めませんからね。 そして、良いと判断するワインとそうではないと判断するワインを選別するとなると、まあ、厳しいことも口にすることになります。 そこで、輸入会社さんとぶつかることもあります。 何が一番衝突する原因かと言いますと、 最初に書きました、そのワインの良いところを見出して、そのようにコメントして案内していることです。 そりゃあ、輸入会社さんとすれば至極当然のことをされている訳です。 そこに意見を言うなんてもっての他ですよね。 ところが、無理があると言わざるを得ない味というか、そう感じる場合はですね。 正直にその感想を伝えます。 その時なのですね。 その輸入会社さんの姿勢が分かる時って。 お互いに肯いてですね。 分かります、おっしゃることは。 でも、言葉としてはこのようにコメントするしかないのですよ。 って感じで理解しあえる場合と。 そうではない反応をされる場合とに分かれます。 衝突までいくことはもちろんほとんどありませんが、お互いが理解しあえることの無いままに終わることは多くあります。 それから、 「まずいワイン」というレッテルを貼ることになるようなものは、もちろんそんなにありません。 しかし、美味しいとお墨付きを与えることの出来るワインばかりかというと、そういう訳にはいかないのも現実です。 そこで考えるに 要するに「当たり」「はずれ」というやつですね。 その概念は消費者さんにはある訳です。 まあ、ワインは買ってみなければ分からない。 で、今日のワインは外れだったなあ〜。 数日前に買ったワインは、大当たりで良かったなあ〜。 というその感覚ですね。 つまり、「まずい」とは言わないけれど、「はずれ」と表現しますね。 消費者の方は、この「当たり」「はずれ」という感覚を持っています。 確実にです。 それならば、それを供給する流通業者の立場に在る我々は、やはり、「ワインにはまずいワインはない」というスタンスに立ち続けていてはいけないのではないだろうか。 そう思います。 「まずいワイン」は無いけれど、「はずれのワイン」はありますよ。 何てことを言ったら、 そりゃ、ずっこけますよ。 いや、ホントに。 「まずい」と「はずれ」は、どう違うんじゃいってことになりますからね。 ところが本当にお客さんに対して「まずいワインは無いけれど、はずれのワインはありますよ。」 って言ってましたからね。 流通業者の方々は。 これ、ワインの不思議なんですよ、ホントに。 でも、この感覚ってもしかして、ワインはこれでいいのかもっていう感じもあったりします。 不思議ですねえ。 美味しいワインとまずいワイン。 ワインにはまずいワインはないのです。 これは もう、そっとしておこうかなあ〜。 その方がいいのかもしれないなあ〜。 2012.10 |