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【ボジョレー・ヌーヴォー考(2) マセラシオン・カルボニック法とは】 ボジョレー・ヌーヴォーは9月に収穫された葡萄が、わずか2ヶ月で新酒でも美味しく飲める赤ワインです。 この秘密は、マセラシオン・カルボニック法と呼ばれるワインの造り方にあります。 通常の赤ワインの製法では、葡萄を破砕し、果汁に果皮や種子を一緒に接触させた状態で醗酵させます。 これにより、果皮や種子に含まれる色素やタンニンが果汁に抽出されながら醗酵が進みます。 しかし、ボジョレーヌーヴォーでは渋く感じるタンニンを果汁にあまり抽出したくありません。 なぜなら、赤ワインの新酒として爽やかな味わいを楽しみたいからです。 ところが、果皮を漬けなければ色素が抽出されません。 そこで、他の方法が考えられました。 それは、葡萄を破砕・徐梗せずに房をまるごと醗酵タンクの中に入れて密閉します。すると、自らの重みで下の方の葡萄が潰れて自然に醗酵が始まります。 この時に出る二酸化炭素(炭酸ガス)が醗酵タンク内に充満していきます。 二酸化炭素でタンク内を満たす訳ですから酸素が無くなっていきます。葡萄果粒をこのような無酸素に近い状態に置くと果粒中で酵素によるアルコール生成が起こることが発見されています。 そして、酸味が柔らかくなり、甘くフルーティな香りが生まれ、皮からの色も溶け出しやすくなります。 (ボジョレー地方ではこの原理を研究して、ボジョレー・ヌーヴォーとして商品化されています。この研究は現在も行なわれており、まだまだ分からない部分も多いそうです。) その後、搾った果汁によるアルコール発酵が行なわれます。 つまり、この状態の房を絞って赤く色づいた果汁をとり、あとは白ワインと同じように発酵させるため、果皮や種子からのタンニンの抽出の少ない、よって渋みがほとんど無い、フレッシュでフルーティなワインに仕上がります。 アルコール発酵終了後に、もし酸味が強い場合はマロラクティック醗酵を行うこともあります。 ボジョレー・ヌーヴォーはこうして、あざやかな色合いを持ち、タンニンがあまり抽出されずに渋みの少ない飲みやすい赤ワインになるのです。 又、このマセラシオン・カルボニック法により、ボジョレー・ヌーヴォー独特の香りがします。 その香りとは、う〜ん、バナナみたいな香りかな。 (補足1)マセラシオン・カルボニック独特の香りは果粒中で生成されるのか、酵母によって生成されるのかは確認さ れていないそうです。 (補足2)マセラシオン・カルボニックにおける色素の抽出も、色々な研究報告があるそうです。 理由は特定されてはいないのですが、結果として鮮やかな色合いの赤ワインになります。 それから何故、ボジョレー地方でこの方法が研究されているのでしょう。 それは、やはりこの地方で栽培される葡萄品種のガメイ種がこのマセラシオン・カルボニック法と相性の良いことが一番の理由です。 ガメイ種・・現地では「ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン」と呼ばれています。 訳すと、「果皮は黒いが果汁は白い」と言うような意味になります。 ここから、もともと濃い色の赤ワインにはならない葡萄品種であり、同時にタンニンが少ない葡萄品種であることが想像されます。 このガメイ種を使って、マセラシオン・カルボニック法で赤ワインを造ると新酒時から美味しく飲める赤ワインが誕生すると言うわけです。 この相性の良さから、こうしてフランス・ボジョレー地区の新酒は美味しい赤ワインとして、ボジョレー・ヌーヴォーの名で世界中の多くの人々に歓ばれているのです。 【ボジョレー・ヌーヴォー考】のページへ戻る |