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【旨い酒を旨く飲むについて】 「旨い酒を旨く飲む」が当店のキャッチフレーズです。 そのことに付いて、日本酒とワインを比較しながらお話させて頂きます。 まずこの両者、同じ醸造酒ですがやはり根本的に違うと思います。 原料が違うのだから当然なのですが、それ故に大前提として和食にワインは合わないということがあります。 ワインにはマリアージュなる概念があります。 食事との相性を大切にした考え方です。 このワインにはこんな料理が合う。 フランスの食文化が醸成されて自然に出来あがって行ったのでしょう。 素晴らしいことだと思います。 しかしながら、それが高じて「これこれこうでなければならない。」と固く捉えるようになってしまうのは良くないのでは・・、等々の意見が出るようになり、そんなに杓子定規にワインを見ずにもっと気軽に捉えて、料理との相性なんてそんなに気にせずに飲みましょうとなって行きました。 そんな中、寿司、天ぷらにワインという図式が一時広まる様相を見せました。 特に高級すし店や天ぷらの店で高級ブルゴーニュを合わせるのが流行ったりしました。 今ではもうすっかり定着しているようです。 又、この頃では和食にワイン党の方も多くいらっしゃいます。 但し、根本的なことをきちんと押さえることも重要なのではないかと思います。 「肴はあぶったイカでいい〜」何て八代亜紀の舟唄(ふなうた)の歌詞にありますが、これ、赤であろうと白であろうと、まずワインなんて合いませんよ。生臭みが増幅されてしまいます。 歌詞の通りに日本酒、それも燗酒でしょう。「お酒は温めの燗がいい〜」ですね。 日本酒と合わせると、あぶってあるとはいえまだ残っているイカの生臭みをまるで魔法を掛けたかの如く消してくれます。(これをマスキングされると言います。) (注:ある感覚が別の感覚をかき消す(マスクする)ことをマスキングといいます。) つまり、日本の魚料理には基本的に日本酒が合います。 反対に、焼き肉屋さんで日本酒。これも合いませんね。やはり、ビールか焼酎、そしてワインでしょう。 ピザを宅配してもらったら、ワインですよね。日本酒じゃない。 寿司や天ぷらにワインを合わせるにしても、ジョイント役の調味料やレモン汁が必要になります。 杓子定規に考えず、色々と楽しく飲めば良いじゃないか。 もちろん、その通りです。 しかし、原則となるルールのようなものを知ってから、それを崩して試みる方が本来の姿です。 その中から、ワインに合う和食もあるでしょうし、調味料一つで魔法をかけたかの如くワインと相性の良くなる和の料理もあるでしょう。 その元には、日本酒にはその良さを味わう味わい方があり、ワインにはワインのそれがあります。 それが、いわゆる飲み頃温度であり料理との相性です。 一番大切なのは、お酒と料理それぞれが活かされて美味しく楽しめることです。 酒との楽しい付き合いは、やはり押さえどころは押さえて頂きたい。 そのことを称して「旨い酒を旨く飲む」と致しました。 それでこそ本当のお酒の楽しみ方であると思います。
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