美味しさのかたち
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【燗酒と冷酒について】

 
 燗酒を見直そう。

少し前の「いい酒は冷やで」の一辺倒なんておかしいでしょ。

こんなくだんの表現を目にします。

あなたは燗酒派それとも冷酒派?
なんて質問されたりもします。

ワインでも言えることですが、それぞれに合った飲み頃温度というのがあります。
それは、とても重要なことだと思います。

もちろん、日本酒とワインは別モノなので、同じ視点で計ってはいけません。
しかし、日本酒であれ、ワインであれ、その液体を最良の状態で飲むには、やはり、それに適した温度を知らなければなりません。

その次に、飲用の仕方です。
つまり、合わせる料理ですね。

ワインには、フランスにおいてマリアージュなる概念があります。
日本に紹介されたとき、赤ワインには肉料理、白ワインには魚料理が合いますよ。
として広まったことは皆さんご存じのとおり有名ですね。
しかし日本での日本酒の飲み方は、昔から「酒を酒のまま、そのまま飲む。」という飲み方が有って、そこに充てとなるつまみがあれば良かったのです。

つまり文化の違いからでしょうか、あるいは種としてのお酒の成り立ち故でしょうか、ワインは料理の脇役であり、料理に合わせてワインを選ぶのが順序です。
しかし日本酒は、旨い酒を飲みながら、友と酒を酌み交わし、つまみとなる肴に箸を伸ばします。
もちろん、一人の手酌酒も同様です。


 さてそこで、日本酒の燗酒と冷酒について考察していきたいと思います。

現在の日本酒はとても種類が多く、少し冷やして飲むと美味しいタイプから燗にしてこそ本領を発揮するタイプまで様々です。
そこで、純米酒あるいは特別純米酒に絞って見て行きたいと思います。

 一般的な純米酒の場合、少し冷やして、またはそのまま常温でもいけますが、燗をしても美味しいですね。つまり、オールマイティに楽しめます。

ただ、商品によってその特徴がまちまちで、少し冷やからそのまま常温が美味しいタイプもあれば、やはり燗をしてこそ美味しいというタイプもあります。
こう書くともう際限がなくなってしまいそうですが、造りの違いや蔵の方針等から最も適した飲み頃温度がそれぞれに違うようです。

そこで、ここはあくまでも一般論として記していくことにします。

  一般的な純米酒は、冷酒(少し冷や、そのまま常温)の時に出てくる美味しさと燗酒にした時に現れる美味しさが違うということです。
又、四季によっても味わいが異なります。
出来たばかりのしぼりたて生酒。これは冷酒で頂きますね。この時の美味しさの主な要因は、フレッシュさ、それは綺麗な酸(特にリンゴ酸)が寄与しています。
そして合わせる肴は、う〜ん、そうですね〜、新鮮な魚料理、刺身でしょうか。

では通常の火入れをした純米酒の燗酒はどうでしょうか。
同じ魚料理でも、煮魚、焼き魚に合いますね。

例えば、秋刀魚(サンマ)。
秋刀魚を焼いたときに出る脂分、これが美味しさの要因ですが、ここに冷酒を合わせるとこの脂分が酒と溶け合わされずに浮いてしまい、何だか不味く感じます。
脂分の高い温度と低い温度のお酒という組み合わせが原因ですね。
しかし、燗酒だとこの脂分を包み込むように融合してくれます。だから、秋刀魚もお酒も美味しいと感じます。

この理屈は、肉料理の時にも同じことが言えます。
肉でも焼き鳥などの比較的あっさりしたものなら、冷酒に合いますが、温めた料理で肉汁の出るような料理ならそれにはやはり燗酒が合います。

つまり純米酒は温度による酒の味の変化を楽しむだけでなく、酒の温度そのものの果たす役割をきちんと押さえておくことでいっそう美味しく頂けるのです。



                                      
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