酒屋慶風/対談集
【日本酒編】
辛口とは・・灘の銘酒「菊正宗」を基準に考えてみる
「ザ・ベーシック」
灘の銘酒「菊正宗」
日本酒をたしなまれる方で、この名前を知らない方はおられません。
この蔵を紹介するにあたり、その「キャッチコピー」を「ザ・ベーシック」としました。
灘の伝統を守り続けるこの蔵の酒は、正に日本酒の基本型の味であり、スタンダードといっても過言ではないと思います。
ただ、この蔵元さんは自ら「真・辛口宣言」なるものをされています。
私は、これをすんなりとは理解できませんでした。
日本酒の「辛口」という概念は、かなり大雑把な概念であり、掴みどころのない感覚です。 辛口の酒がいい、とよく言われるのですが、なかなかこれがそうです、という味と言うものがないのが日本酒なのです。 そこから切り取るようなカタチで「淡麗辛口」と言えば、こうゆう味のことをいうのだなあという感じの日本酒は存在します。 大分類から小分類にしたことで伝わるのですね。
菊正宗さんは、おっしゃいます。 当社の酒は「辛い」と感じないのです。 ??? 「真・辛口宣言」をしておられるのでは・・ 意味がよく分かりません。
つまり、日本酒の辛口という概念を表現することは、それ程に難しいのです。 それは、お酒が単純に辛いと感じるだけの液体であったならば、ギスギスして美味しいと言う感覚の味わいがないということになります。 要するに、「辛い」という感覚が「辛さが刺す」ように感じるような味だとしたら、当然美味しいとは思いません。 ですから、辛口を謳っているのに、「辛い」と感じないのです、となるのです。
こうゆう矛盾しているとしかいいようのない日本酒の世界ですが、この菊正宗さんのいわんとしておられることは、伝統的な良い日本酒は、鈍重で甘ったるいお酒ではなく、料理の味を引き立てながら、美味しく楽しめるお酒でなければならない、という事をおっしゃっているのだと思います。
それを表現するにあたり「辛口」を用いているということだと思います。
でも、伝わるのはここまででしょう。
「辛口」なる言葉を以て、美味しい酒を表現するために使ったとしたら、反対に分からなくなってしまいますよ。
そこで、私は「ザ・ベーシック」というキャッチコピーで以て紹介しようと思います。
この酒こそが、伝統の日本酒のスタンダードであり、まさに「ザ・ベーシック」なのだと感じたからです。
(注)あえて、こうして大手さんの名前を出して「辛口」なる言葉の概念を記述させてもらいました。
実際、この「灘の生もと造り」こそが日本酒のスタンダードだと思っていますし、現在もその「生もと造り」にこだわっておられる菊正宗さんに敬意を持っています。
(y)2010年5月 今年は肌寒い日が多く、五月晴れの少ない気候です。
対談という書き方ではありませんが、菊正宗酒造さんの課長さんと長い時間を掛けて
お話をさせて頂きました。
よってこのページは、了解の元に載せています。
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