美味しさのかたち
 酒屋慶風
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【日本酒は日本の心が創る】

 前編の「日本酒の個性とは」の中に書きました、「日本酒は日本の心が醸す」と言うくだりについて少し述べさせて頂きたいと思います。
 
私は、文化は自分達で創り出してこそ価値があると思っております。そして日本酒の文化は日本の心が創り出してくれるものと信じています。

 大昔、人々は自然に原生していた果実を取って食べていたものを、人間の知恵で田圃や畑というものを作ってより効率よく食べ物を収穫できるようにしました。
つまり、自然の恵みを上手く利用し応用して生活の営みの基盤を創り上げました。
これが農業の始まりです。
そして、人々はより美味しいものを収穫する知恵を絞っていきます。
これが食文化の始まりです。

  そこから時代が進み「米」からアルコール醗酵という過程を経てお酒が出来上がるわけですが、このようにして生み出された日本酒は、最近の言葉を借りればその当時のイノベーション(技術革新)を生む過程と自然の摂理によるコラボレーションから創り出されたものと言えます。
つまり日本酒は日本という気候風土の自然の産物であり、農業と言う名のイノベーションの先に在る農産物なのです。

 日本酒とは米の持つ糖分を酵母と言う微生物の働きにより、アルコールと二酸化炭素に変えていくアルコール醗酵により生まれるお酒です。
この酵母の働きとは、言い換えれば酵母と言う生命体の営みに他なりません。
それはつまり、自然の生命体の営みにより生じているのだと言うことです。
そして、原料となる糖分が含まれているお米もまた自然界に存在する植物なのです。
但し、米のでんぷん質を糖分に変えてやる「糖化」は人の手が入ります。

私は、日本酒は「日本の心が醸す」と思っています。
日本の心??何だろう。そう思われるのは、ごもっともです。

  移りゆく日本の四季は、人々の心が自然にやすらぎ、そして美しい心を養ってくれます。
  これが日本の心です。

  もののあわれ(物の哀れ)  この感覚が日本人には備わっています。

日本酒の味わいは、しみじみとその情緒を堪能できる飲み物です。

  現代の製品つくりは、ニーズを意識したりそれに合わせたりしながらマーケティングに活かされる様に考えながら造られますが、それは他を意識したり競争したりする相対の世界から生まれる味です。
そして今はそれが正しいとされています。
しかし、個性豊かな感性のある味わいは他を意識するところからではなく、己を見つめ己の中から生まれるように思います。日本を見つめなおして、日本の心で日本酒を造って欲しいと思います。

本来持っている日本酒の価値。
それは、日本の気候風土と言う自然と日本人の知恵とが創り出している、日本の素晴らしい食文化に他なりません。
この価値観の復興こそが日本酒文化の根底になければならないと思うと同時に、日本酒の個性もこの点を抜きにして考えたり創り出せるものではないと思います。

日本酒は日本の心が創る。
その感性に活かされた個性が表現されて始めて本物になる。

日本には日本酒がある。
誇りにしたいと思います。


                                      
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