酒屋慶風/美味しさのかたち

【小笹屋竹鶴について】


  広島の竹鶴酒造さんでは、小笹屋竹鶴と言うブランド名の酒で使用する酒造好適米「雄町」を契約栽培しています。それも、現在3ヶ所6軒の農家の方と結んでおられます。

これは農と醸との連携を密にして、よい米を作りよい酒を醸すことが、循環型農業として日本の酒文化を作っていくのではないかとの思いから、石川達也杜氏が提唱したものだそうです。
でもやはり実際の苦労は中々大変なものがおありのご様子です。

 良い米を手に入れることから酒造りは始まります。酒蔵はその手腕が問われます。
しかし、必ず100%毎年良い米が実るかと言えば、天候不順や災害に当る年もありそれ程簡単に事は運んでくれません。理想を掲げてみたものの世の中その通りには中々行きません。
 でもここからがこの蔵のすごいところで、そういう悪い年でも農家の方と共に協力して、あらゆる限りの努力をしながら出来る限りの良い米を作り、そしてその出来た米で酒を醸す事です。しかも、そういった米で造る酒も必ず「小笹屋竹鶴」として醸します。
一般的な見方からすると、商売優先で考えれば、天候不順の年の米で、出来映えにあまり満足の行かない米は、安価な製品を造る時に回して使うのが妥当だと思われます。でもこの蔵ではそれをしません。
その年に出来た米を使い、その年の小笹屋竹鶴を醸すのです。

これは半端な覚悟では出来ません。
だって、「じゃあ今年も例年通りのやり方で・・」なんて行かないのですから。
同じ「雄町」で毎年醸すのに、去年の経験則がそのまま活かせない。
つまりここで、杜氏は毎年が1年生であり、毎年が挑戦者であると言う言葉がずしりと響きます。

 良い酒米を農家と一体となって栽培し、毎年の出来具合を見ながら酒造りの設計を組み立てます。
もちろん田圃ごとに微妙に特徴が違います。
これが本当の杜氏の仕事なんだろうなあ〜と思います。
これが本来の地酒の姿なのではないか。
そんな気がします。
そういう訳で小笹屋竹鶴は、自然な循環の中から生まれる酒だともいえます。

  小笹屋竹鶴は一つの田圃の米は他の田圃の米と混ぜることなく、同じ田圃の酒米だけで一つの酒を造ります。
それから、石川杜氏は酒の味を狙って造りません。
つまり、辛口に仕上げようとか、どっしりした酒にしようとか考えません。
そのタンクと向かい合い、もろみをまるで放し飼いのようにしながら対話します。
そのタンクの最も良い状況を提供してやることが、その酒米のポテンシャルを最もよく活かすことになる。そんな酒造りをしています。
だから、日本酒度や酸度はあくまでも出来た酒の結果としての数値でしかありません。
健全な醗酵と上槽時期の見極めが肝腎なのだというわけです。

こうして出来た酒は、無濾過で瓶詰めします。
この時、その前の工程の清澄には特に時間を掛けるそうです。
その後、原酒のまま火入れしたものを低温で瓶貯蔵して飲み頃になるのを待ちます。
およそ秋の10月には出荷されます。

真の酒文化を担うべく頑張っている男の酒「小笹屋竹鶴」みなさんもぜひお試しください。

2005.10


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